そんなの、嘘。

午前中は慌ただしく、でも厳かに過ぎていった。

法要で集まった親戚には、都会での暮らしを羨ましがられたりしたけれど。

母が、
「でもこの子、今、幽霊に憑かれてるみたいで」
と言ったことから、誰も話しかけてこなくなった。






おじいちゃんの法要が終わり、普段着に着替えてから、私は部屋で探し物をした。



(確か、風太の住所はノートに書いてたはず……)



何のために書いてもらったんだっけ?

……もう忘れちゃったけれど。

確か、卒業式の日に。

ノートの後ろに書いてもらった記憶がある。



「……あ、あった……」



数学のノートの後ろに。

風太の文字で、住所が書いてある。




その文字を指でなぞり、
「風太、ちゃんと生きててよ」
と、声に出して祈った。




ガタガタガタッ!!!





窓が、揺れた。

突風でも吹いたみたいな。

これも怪奇現象?



「今、会いに行くから」





私はノートを持って、風太の住む隣町へ出かける。

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