そんなの、嘘。
『あの、お上がりください』
と声がして、マンションのエントランスのドアのロックが解除された。
私はドキドキしつつ、エレベーターの呼び出しボタンを押す。
(生きてる、生きてるよね)
だって。
もういないって言われなかった。
来ても無駄だって、帰されなかった。
(大丈夫、風太に会える)
そしたら。
私、笑顔でこの怪奇現象の話をするんだ。
風太に笑い飛ばしてもらおう。
それで。
ずっと隠したままの本心を打ち明けたい。
実らなくてもいいから。
好きだよって。
伝えるんだ。
部屋の前に着いた。
若い女性がひとり立っていて、
「小島さん?」
と、聞いてくる。
頷くと、
「入って」
と、部屋のドアを開けてくれた。
「私は風太の姉です。羽花っていいます。よろしくね」
「あ、よろしくお願いします。小島です」
「……和音ちゃんって呼んでもいい?」
「えっ?あ、もちろん」
「私もそうなんだけど、大学生?春休み中だよね?まぁ、明日までの休みだけど」
「はい」