そんなの、嘘。

食堂自体はまだ開いていなかったけれど、食堂の中の購買は開いていて。

アイスだけ買って、私達のゼミの教室に向かう。



「進級制作、もう終わった?」
と、やっこがアイスを頬張りつつ尋ねてくる。



「ほとんど。でもマークの課題がまだあんまり終わってない」

「あー、マークね。どんなの選んだの?」

「星に見えなくもないやつ。マークを星っぽく描いてさ、夜空にするつもり」

「それ、危険かも」



やっこは顔色ひとつ変えずに言う。



「星に見立てて夜空を描くとか、みんなが発想しそうじゃない?もっと独創的なほうがいいよ。発想力に点数つきそうなやつ」



「なるほど、独創性って大事だよねー」と、適当に相槌を打ちつつ、内心では描きたいように描かせてくれよ、と毒づく。



やっことしばらく他愛のない話をしていて、少し沈黙があった後。

やっこがふいに言った。



「和音ちゃんの知り合いって、誰か亡くなった人っている?」



「……えっ?」

< 4 / 35 >

この作品をシェア

pagetop