片恋 好きな人には好きな人がいる


あーぁ、知らねぇぞ…俺は。

こいつは、本当に自分のことに関しては疎いな。


本人は全く気づいていないようだが、周りからは、完全に好意を寄せていると思われているだろう発言。

俺は額に手をあてて項垂れていると、我に返った立花が慌てたように口を開いた。


「え?うん。いや…その、あの…そ、それじゃあ、また明日!!」

案の定、立花は動揺した様子で逃げるように走っていってしまった。


おいおい、あいつ大丈夫か…。


「あぁー、凄い速さで行っちゃったねぇ。どうしたんだろう?」


「今のはお前が悪いだろ……」


「なんで?」


「なんでもねー」


はぁーっとため息をつきながら言うと、意味がわからないといった表情で俺を見ている。


無自覚って恐ろしいな。


こいつにはもう少し気をつけるように言わないとだめなのか?


「…なぁ、一輝は立花のこと好きなのか?」


答えは何となくわかっていたけれど、一応確認してみた。
一輝はきょとんとした後、すぐに笑顔になり少し首を傾げて答えた。


「うーん、友達として好きだよ」


「…だと思った」


予想通りの答えに、興味なさげに返事をすると
一輝は少しムッとした顔で俺の顔を覗き込んでくる。


「急になんで?」


「別に」


一輝はふーんと言って、不思議そうな顔をして首を傾けている。


面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。


さっきのこともあるし一応忠告しておくか、このままだといつか絶対に面倒なことになりそうな気がする。
< 10 / 64 >

この作品をシェア

pagetop