片恋 好きな人には好きな人がいる


「あ、旭が笑った!あはは!」


「なんだよ、笑ったら悪いのか」


「ううん、旭は笑った方がいいよ。嬉しいなって思っただけ」


「変なやつだな」


くすくす笑っていると、旭は不思議そうに首をかしげていた。


「お願い事するんだろ?」


「うん、そうだね……。旭はどうするの?」


「俺はいい。そういうの興味ない」


うーん、と考えていると、隣でボッーと夕陽を眺めている様子の旭の横顔が目に入った。


よしっ、決めた。


「旭とずっと一緒にいられますように!!」


大きな声で宣言するように言うと、旭は少し驚いたようにこちらを見たあと、ふっと微笑んで言った。


「そういうのって口に出すもんじゃないだろ…。帰ろうぜ」


そう言った旭の顔は逆光でよく見えなかったけど、なんだかとても優しかった気がする。


なんだろう……。


旭の顔を見てると心がぽかぽかするような、暖かい感じ。
これが何なのか僕には分からなかった。

その日を境に旭はよく笑うようになったし、よく喋ってくれたことが嬉しくて仕方がなかった。


旭が今まで笑わなかった理由。


幼稚園年中さんの時に笑った顔が怖いと言われたことでコンプレックスになり、それ以来笑うことが出来なくなって、友達とも遊ばずにいつも仏頂面だったらしい。

旭は繊細すぎる。だって、そんなことで人を避けたり、遠ざけたりするんだから。


旭の笑った顔はかわいい。
それは僕だけが知ってる秘密。
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