片恋 好きな人には好きな人がいる
僕が中学生になってから小学校の時より告白される回数が増えた。
正直、好きな人がいるわけでもないし、好きでもない人と付き合う気はない。
だから毎回断るんだけど、たまにしつこい子がいて困ってしまうことがある。
この前は、断ったのにその子が泣きながら喚き散らして収拾がつかない状態にまでなってしまって、本当に困った。
どうしてみんな自分の感情を押し付けてくるんだろう。
相手のことを思うなら、その人が幸せになることを願うのが普通じゃないんだろうか。
断られる立場に立ってみたら、僕も女の子たちの気持ちがわかるようになるのかな…。
旭はというと、無口で無愛想なのは変わらないけど、制服の上からでも分かるほどしっかりとした体格、目つきと態度は悪いが顔は整っていて密かに女の子から人気があるのに本人はまったく気づいていないようだった。
「旭は好きな子とかいないの?」
旭は不思議そうな顔をして首をかしげた。
「はぁ?興味ない。たとえ好きな奴がいたとしても、俺なんかを好きになってくれる奴なんていねぇよ」
呆れたようにため息をついていた。
無自覚ってタチが悪い。
「相変わらず卑屈だなぁ〜。旭のことちゃんと見てる人はいると思うよ。もっと自信持てばいいのに。それにこの前、三組の子にクッキーもらってただろ?」
「あぁ、あれな」
旭は少し困ったような顔をしたあと、気まずそうに視線をそらした。