片恋 好きな人には好きな人がいる
鈍感なやつ
あれは確か先月のことだったと思う。僕が日直の仕事を終えて教室に戻ると、まだ残っていた女の子たちに囲まれた旭を見て、何故か胸がチクッと痛んだ気がした。
なんでだろう…?
自分の胸に手を当ててみても理由が分からない。まぁいいか、気にせずに旭の元へと歩いていく。
僕に気がつくと彼女たちの一人が旭に声を掛けた。
『これ、クッキー家で焼いてきたんだ!多く作りすぎたから佐竹くん、これよかったら食べて!』
そう言って差し出された可愛らしいラッピング袋を旭は「あぁ、ありがとな」と無愛想な表情で受け取ると、その子の前で僕に押し付けるように袋を渡してきた。
〝俺、甘いの無理。お前、甘いもん好きだったよな……?〟
渡した女の子は顔を真っ青にして、今にも泣き出しそうな目でこちらを見ている。
旭…それマズイよ。
女の子が泣きそうになっているのを見て、慌てて僕はフォローするように言った。
「わ、わざわざありがとう!すごく美味しそうだね!実は旭ってクッキー大好きなんだよね!なっ?旭!!」
キッと旭を睨む。
「え?あ、いや……」
「じゃあ、僕たち急いでるから!またね!」
強引に話を切ると、逃げるようにしてその場を去った。