片恋 好きな人には好きな人がいる


なにがきっかけになるかなんて分からないものだ。


恋に気づく瞬間は自分がぼんやりと考えていた予想を遥かに超えて突然やってきた。


告白されるたびに、いいな、僕も誰かを好きになれたらいいと思ってた。


特別に人を好きになるってどんな感じなんだろう。


特別、特定の誰かを好きになることは今でなかったし、みんな仲良し、みんな嫌いじゃない、みんな同じくらいの好きだった。

それに僕は女の子が好きだ。
可愛くて、柔らかくて、いい匂いがするし守りたくなる。


だけど、考えてみたら男同士だとかそんなこと関係なく、旭だけがずっと僕の中では特別だった。


そっか、僕って旭のことずっと好きだったんだ……。


そう思ったら、ストンっと胸に落ちた。


あぁ、だからあの時、旭が笑ったのを見てすごく嬉しかったんだ。


この気持ち、もしかしたらおかしいのかもしれない。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
むしろ、温かい気持ちで満たされていた。


これが、僕が知りたかった人を好きになるってことなのかな。


あれから、旭の近くに居ると変に緊張してしまうことが多くなった。
ぎこちない態度をとってしまう度に自己嫌悪に陥ったけど、旭はまったく気にする様子もなかった。

< 30 / 64 >

この作品をシェア

pagetop