片恋 好きな人には好きな人がいる
もうすぐ高校受験を控えた中学三年の冬。
なるべく普段通りを装っていたけど、内心は気が気じゃない。
勉強を教えて欲しいと言ってきた旭の部屋に今、僕は居る。
今までだったら二人きりになってもなんとも思わなかったのに、妙に意識してしまってダメだ。
でも、旭に教えて一緒の高校に合格しないと困るし、気持ちを切り替えてさっそく問題集を開いた。
最初は真面目にやっていたが、どうしても僕の前いる旭を目で追ってしまう。
だめだ、集中しないと……そう思ってもなかなできない。
ゔーん、悶々としている僕をよそに旭はペンを持ったまま机に突っ伏して眠っていた。
はぁ、まったく……。
気持ち良さそうに寝息を立てている旭の黒髪を机から身を乗り出すようにしてそっと撫でた。
見た目よりも柔らかい髪は指の間をサラサラと通り抜けていく。
好きだなぁ。
そう思った瞬間、旭の前髪をかき上げ、ゆっくりと額に顔を近づかせ軽く口づけをすると旭は身じろぎ、眉間に皺を寄せるとまた、すぅすぅと寝息を立てはじめた。
ハッと我に返り、慌てて離れると心臓がバクバクと音を立て始めた。
何やってんだよ!寝てる隙にこんなことするなんて最低じゃん! どうしよう……。
でも、どうしようもなく旭のことが好きだ。
愚かなことだってわかってる。ごめん、友達なのに好きになってごめん。
もし自分の気持ちを伝えても、きっと旭は優しいから、僕を傷つけないよう受け止めてくれて、これからも変わらず接してくれると思う。
それは嬉しいことだけど、旭を困らせるのは僕が耐えられないし、旭には幸せになってほしから。
だから、今はこのままで…。
旭が僕から離れない限り、友達のままずっと一緒に居られるならそれでいい。
まだ気持ちよさそうに眠っている旭に向かって微笑んだ。