片恋 好きな人には好きな人がいる
放課後、一組の女の子から話があるからと言われ、旭には先に帰ってもらった。
「ごめんね、誰かと付き合うとか今は考えられなくて。嫌いとかじゃなくて山中さんは可愛いからもっと相応しい人がいると思う、中途半端な気持ちでは山中さんに失礼だから…ごめんね」
いつも通りのテンプレートの台詞を口にした後、みんなすぐに納得してくれるのに、その子は引き下がらなかった。
困ったな、どうしよう…。
どうして駄目なのかと泣きながら抱きつかれて、本当に困ってしまった。
好きじゃないのに、そんな相手に好かれてもどうしたらいいか分からない。
このやり取りはいつまで続くんだろう…。
とりあえず、泣かせてしまったことを慰めていると、廊下の方から旭の声がした。
反射的にそちらを向くと、そこには立花さんと旭が見えた。
えっ?先に帰ったんじゃ…。
旭は立花さんの腕を掴んでそのまま連れて行ってしまった。
なんだあれ…
追いかけなきゃ、そう思って廊下に出ようとしたが女の子が離してくれなかった。
ごめんね、そう言って腕を離そうとしたら泣いていて、まともに話せないのか言葉になってない声で何か訴えてきた。
なんで、そんなに泣くんだよ。
あんなの見て泣きたいのは僕の方だよ…。
女の子はなんとか落ち着いたようで、最後に謝ってくれたけど僕は何も言えなかった。
だって、もう何も考えられなかった。
二人が居なくなった廊下を呆然と見つめて、いつまでもその場から動けなかった。