片恋 好きな人には好きな人がいる
恋の行方
旭と立花さんは前に比べて話をするようになった。
あの日、二人の間に何があったのかは分からないけど、僕だけが知っていた旭の笑顔が他の誰かに向けられることが辛いし苦しい。
僕の気持ちを知られたくない、知ってほしい。矛盾した気持ちばかり生まれて、自分がどうしたいのか分からない。
ずっと恋愛なんて自分には関係ないって思ってた。
今まで僕に告白して来た女の子たちもこんな思いをしていたのかな。そう思うと、とても酷いことをしてきたんだと気づいた。
好きな人がいるのにその気持ちを隠し、他の人からの好意を受け取ることはどれだけ残酷なことなんだろう、そう思った。
ねぇ、旭、やっぱり立花さんのこと好き?
僕のことはどう思ってるの? 聞きたい、でも聞けない。
聞いたら全てが終わってしまうような気がして怖いし、聞かなくても答えなんてわかってる。
どうにもならいし、どうにもできない。
絶対に受け入れてもらえない想いは時が経つにつれて消えてくれるのだろうか。
僕はこの想いを心の奥深くに閉じ込めて旭の幸せを近くで見守ること選択した。
振り向いてくれるはずのない恋をしている夏のはじまり。
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに旭が遠い。
恋ってのはなんて難しいんだろう…
僕の好きな人には好きな人がいる。