片恋 好きな人には好きな人がいる
何してんだろ私。
いや、でも、勇気を出して今日こそは!
そう思い教科書を片手に意を決して立ち上がって近づこうとしたけど、さっきより人数が増えてることに気づいてまた立ち止まってしまう…。
うぅ……どうしよう、やっぱり無理かも……。
「おい、一輝」
突然、聞こえてきた声の方に振り返ると、そこには不機嫌そうに眉を寄せて自分の席に座っている佐竹くんの姿があった。
なんでもない、と佐竹くんが言った後に二人にしか分からない独特の間と空気が流れた気がしたと思ったら、急に大場くんが席を立って佐竹くんの肩を軽く叩くと私の前にやって来た。
えっ?ど、どうしよう、緊張する。
目の前に来た大場くんは私ににっこり笑いかけてくれた。
「立花さん、もしよかったら一緒に勉強しない ?」
まさか、向こうから誘ってもらえるなんて思ってなくて、ビックリして固まってしまったけど、すぐに我に返って慌てて頷いた。
嬉しいと思うほどに顔に熱が集まってくるのが分かるくらい熱い、恥ずかしいっ……絶対変な顔になってるよ。
「行こっか」
鈴木くんに促されるまま、私もみんなの輪の中に入ることが出来た。
…でも、さっきの二人のやりとりは何だったんだろう?不思議に思って佐竹くんをチラッと見たが、いつも通りつまらなそうに頬杖をついて窓の外を見ていた。
気にはなったけど、せっかくの機会だから今は集中しないと、仲良くなれるかもしれないと期待に胸を膨らませて教科書を開いた。