片恋 好きな人には好きな人がいる
見たことない顔
大場くんがまた告白されたと噂が流れている。これで何回目なんだろう…。
モテるの当たり前だよね、だってあんなにカッコよくて優しいんだもん。
でも毎回、断っているみたいだけど好きな人でも居るのかな…?
もし、居たらきっと美人で頭も良くて、素敵な女性なんだろうなぁ。
想像するとちょっと胸が締めつけられる…。
ダメだなぁ、こんなんじゃ。
でも、前より話せるようになった気がする。
たまたま、たにかの拍子で読んでいる小説の話をした時、大場くんも同じのを読んでた事が分かって、そこから話が盛り上がったり、おすすめの小説を紹介しあったりした。
今までずっと遠くから見ているだけだったから、距離が近くなって本当に嬉しい。
明日も話せるといいな…。
そう思いなら放課後、図書室に寄って帰ろうと教室の前を通ると誰かがいる気配がした。
みんな帰ってるはずなのに、こんな時間に誰かいるのかな。
ドアの隙間から覗くと、窓際の席に座って外を眺めている大場くんがいた。
夕焼けに照らされた横顔は普段のような爽やかな雰囲気とは違い、寂しそうな儚さがあって、今にも消えてしまいそうなほど脆く見えた。
初めて見る表情に驚いて、思わず隠れるようにドアの影に隠れてしまった。