片恋 好きな人には好きな人がいる
大場くんどうしたんだろう、何かあったのかな……?
声を掛けるのも躊躇うくらいに切なく苦しそうに見える彼がやっぱり心配になって、私は声をかけてしまった。
「大場くん?」
ゆっくりとこちらを振り向き、一瞬驚いた顔をしたが、何事もなかったようにいつもの笑顔に戻って優しく微笑んだ。
「あぁ、立花さんどうしたの?」
振り向いた彼はいつもの笑顔でホッとした。さっきのは気のせいだったのかな…。
「教室の前を通ったら人影が見えたから…」
「そっか、もうこんな時間だもんね。僕も帰ろうかな」と言って立ち上がる彼を引き留めるように咄嗟に口が動いた。
「あ、あの、もし良かったら途中まで一緒に帰らない……?」
いいよ、と返事をしてくれたことにホッと胸を撫で下ろす。
二人で昇降口に向かいながら、今日の授業の事や友達との出来事などを話したけど、さっきの表情が頭から離れない。
せっかく二人で帰れてるのに…。
大場くんは、もういつもの表情に戻っていたけど、あんな苦しそうな表情みんなと居る時は見たことない。どうしてあんな顔をしてたんだろう、すごく気になったけど聞けなかった。
彼のことを心配することしかできない自分が情けなく思えて家に帰ってからも、大場くんのことが気になってしまい、なかなか眠れず朝を迎えた。