片恋 好きな人には好きな人がいる


「えー、酷いなぁ。少しは素直になったらいいのに、ほんと旭は捻くれてるよね」


やれやれといった感じで肩を竦めた。


「うるせぇよ」


フンっと顔を背けると、手に持っていたペンとノートを鞄にしまい始めた。


「あれ?もう終わりにするの?」


大場くんが目を丸くして驚くと、佐竹くんはバツが悪そうな顔をした。


「お前が変な事言うから、気が散ったんだよ」


「え?僕のせい?ごめんね」


佐竹くんがフッと笑ったかと思うと、慌てて謝る大場くんの頭にポンっと手を置いて撫でた。


「冗談、本気にしたのかよ。バーカ」


ニヤッと笑う佐竹くんの顔を見て、大場くんはムッとした顔をした。


「バカじゃない!なんだよ冗談って」


大場くんは頬を膨らまし、子供みたいに文句を言うと、プイッとそっぽを向いた。
その様子を見た佐竹くんは、ククッと笑って立ち上がる。


「雨、止んだみたいだな。そろそろ帰るぞ」


鞄を持って出口の方へ歩いていく。


「ちょっと待ってよ」


急いで荷物を纏めて、佐竹くんを追いかけていく大場くんの背中を見つめながら、私はその場から動けずにいた。
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