友達が結構重たいやつだった
 ここで遠距離恋愛の定義について考えよう。

 やはり一番は物理的な距離だろう。私と龍二は300キロ近く離れているし、そういう意味では遠距離だと思う。

 時間的には車で4時間。新幹線を使っても2時間位。

 交通費は車の場合高速代とガソリン代で往復2万ちょいだろうか。新幹線だと往復で1万5千円位。高速バスは往復で5千円だが時間は新幹線の3倍以上だ。

 時間的にも金銭的にも気軽に会える距離ではないし、やっぱり私と龍二は遠距離恋愛にカテゴライズされると思う。

 でも今の時代スマホで楽に連絡を取り合えるし、お互い新生活が始まって忙しいので、寂しさを感じる余裕はないだろう‥‥と考えていた。

 その予想は寂しさを感じないという意味では当たっていたが、ある意味では間違っていた。

 龍二は毎週金曜、仕事が終わると車を飛ばして私に会いに来るようになったのだ。

 平日は毎晩ビデオ通話してるし、社会人とは思えない頻度でDMのやり取りもしている。

 社会人カップルの場合、週に一度会うのが一般的らしい。翌日の仕事のことを考えて平日に会うのを控える人が多いのだろう。そしてお泊まりがデフォというわけでもないらしい。

 どうやら私達は、遠距離恋愛どころか普通の社会人カップル以上の頻度で会っているのだ。

 龍二は私に会うためだけに、毎月10万以上使っている。実家暮らしとはいえ給与の半分近くだ。決して低い金額ではない。

 毎週来なくてもいいと何度も龍二を説得したが、どうしても聞き入れてもらえない。せめて交通費をいくらか負担させて欲しいと頼んでも『愛海は生活費がかかってるんだから受け取れないよ』と言われてしまう。

 私達の遠距離恋愛は龍二の異様な頑張りで成り立っていて、私はそれを重圧だと感じ始めていた。

 私に関わる全ての異性が嫉妬の対象になってるらしいことも、正直重い。

 できれば自分以外の男と会話をして欲しくないし視界にも入れないで欲しいと思ってそうだと感じる。

 学生の頃はそんな感じじゃなかったのに‥‥別にそれで嫌いになることはないけど、どうにかして以前の龍二に戻って欲しかった。

 私の愛情表現が乏し過ぎて龍二を不安にさせているのかもしれないと思い、意識して『好きだよ、愛してるよ』と伝える努力をした。

 次第に私自身が『好き』という言葉の威力に侵食され始め、明らかに様子が変わった私に安心したのか、龍二も少しずつ落ち着きを取り戻した。

 付き合い始めて約半年‥‥こうしてどこに出しても恥ずかしい熱々のバカップルが誕生した。
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