友達が結構重たいやつだった
 転職という選択肢は既に検討していて、実はもう半年近く転職サイトをチェックしていた。

 化学系の研究職で学士卒の求人は、未経験だと多少条件は悪くなるがなくはない。

 だが東北や西日本の求人は龍二のことを考えるとなしになる。どんなに距離が離れても、多分龍二は私に会いにきてしまうだろう。悩んだ結果、場所は関東に絞っていた。

 応募を関東に限った場合、数が減る上不自然な程同じ会社の求人が目についた。そういう会社は何か問題がありそうだし、そうじゃない会社は応募しても書類審査すら通らない。

 龍二の家の会社は中小とはいえ思ってたより規模が大きく、求人が出ていればそうとは知らずに応募をしていたかもしれない。

 だからわかる。正攻法でいったらこの会社に私が採用されることはない。龍二のコネを使って入社‥‥親戚とかならわかるけど、私はただの彼女だよ?

「何が気になってるの?」

「いや‥‥コネ入社ってどうなのかなって‥‥私は龍二の彼女ってだけで親戚とかでもないし」

「愛海が優秀なのは間違いないしそんなの気にすることないよ。むしろうちの親は喜ぶんじゃないかな?帰ったら早速聞いてみるよ!」

 急に張り切り出した龍二の勢いにおされ、とりあえず採用の可能性があるのかを確認してもらうことになった。

 そして一週間後‥‥私は何故か龍二の実家にお邪魔していた。

「きゃー!愛海ちゃん!いらっしゃい!会いたかったわ!来てくれて本当にありがとう!」

 玄関で挨拶しようと思った矢先、龍二のお母さんに両手を握られ大興奮といった感じで迎えられた。お母さんの勢いはまだまだおさまりそうにない‥‥

「龍二ったらもったいつけて愛海ちゃんのこと全然紹介してくれないんだもの!まさかこんなに可愛い子だったなんて!龍二が隠しておきたくなる気持ちもわかる気がするわ!私、本当は女の子が欲しくてね?なのにお兄ちゃんは気難しいし龍二は愛想がないしで本当つまらなくって‥‥愛海ちゃんはお買い物とか好きかしら?今度一緒にお出かけしましょう?娘とお茶しながら恋バナするのが私の夢だったのよー!」

「ちょっと母さん、愛海が驚いてるだろ?少し落ち着いてよ」

「なによ、格好つけちゃって。拗らせてた頃の龍二よりよっぽどマシでしょ?」

「あー!だから家に呼びたくなかったんだ!お願いだから余計なこと言わないでよ!?」

 どうしよう‥‥あまりの勢いに挨拶のタイミングを完全に逃した。ていうか転職の相談をさせてもらえるって言うから半休とって戻ってきたのに、いきなり家に連れてくるとか‥‥聞いてないんですけど!?
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