友達が結構重たいやつだった
 それにしても龍二の実家が豪邸過ぎる。家のことなんて聞いたことなかったから先週会社の話を聞いた時も驚いたけど、本当に社長令息なんだなと今更実感がわいてきた。

「それで?愛海さんはいつから働けるんだい?引っ越しもあるから急ぐ必要はないけど、今の職場は待遇が酷いんだって?そんなところさっさと辞めて、早くうちにきたらいいよ」

 挨拶もそこそこに、社長でもあるお父さんがいきなり本題に入った。てか、既に入社する前提で話が進んでる?え?そんな感じ?

「商品開発部は工場内にあるから、どうせ引っ越すならそのそばで龍二と一緒に住んだらいいんじゃないか?」

「そうね!それがいいわ!工場は調布にあるのよ?あそこなら買い物もしやすくて緑も多いし住みやすくていいと思う!」

「え?いや?調布なら実家から通えますよ?」

「そうよね、やっぱり女の子のご両親は、結婚前に一緒に暮らすのは気になさるわよね‥‥そうだ!この際だからもう結婚しちゃったらいいんじゃない?」

「いや、うちの親はあまり気にしないとは思いますけど、結婚はまだ早いんじゃ‥‥?」

 いまいち話がかみ合ってないような‥‥どん引きしつつもなんとか自己主張を試みる。しかし彼らの勢いは止まらない。

「結婚なんて遅いことはあっても早過ぎることはないと思うよ?子供ができないように気をつければ問題ないんじゃない?」

と、真顔で返す龍二兄。

「いや!子供も早い方がいいだろう?」

と、ここですかさず龍二父。

「やだー!もー!お父さんたらー!」

と、夫の背中をバシバシ叩きながら照れた様子の龍二母。

 なんなんだこの家族‥‥ノリが軽過ぎる。それでいて圧が凄い。逃げ場一切なしって感じだ。

 展開の早さとあまりの勢いにしばし呆然としてしまう。この人達、抵抗しても無駄な気がする‥‥?人生なんてなるようにしかならないんだし、流れに身を任せちゃってもいいんじゃ‥‥って!駄目じゃない!?私、転職の話をしにきたんじゃなかったの!?

「でも安心したわ。龍二ったら愛海ちゃんのことが好きで好きで好き過ぎて、今に犯罪まがいのことしでかすんじゃないかとやきもきしてたのよ。それがこうして結婚の話ができるようになるなんてねえ?」

 いや‥‥だから私は転職の話をしに‥‥ん?好き過ぎて犯罪まがいのことってなんのこと?てかお母さん!?その雑誌の束は、あの有名な結婚情報誌ですか!?駄目だ!手数が多過ぎて、処理が全く追いつかない!
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