友達が結構重たいやつだった
 日帰りの予定で来ていたので早々に龍二の実家から退散させて頂いた。あのままあそこに居続けたら、婚姻届にサインさせられそうで本当に怖かった‥‥

「ねえ龍二?私のこと、ご両親になんて説明してたの?」

「え?いや‥‥別に普通だよ?彼女が転職を考えてるんだけど、商品開発部で雇えたらきっと活躍できると思うって」

「それにしては結婚の話ばっかしてたよね?」

「あー‥‥ついでに俺も一緒に転職したいって話をしちゃったからかな?」

「え!?どういうこと!?」

 それで結婚の話にはならないだろう‥‥はぐらかされた気もするが、それより龍二の転職が初耳過ぎて気になってしまった。

「元々親の会社で働いて欲しいって言われてたんだ。愛海が今の会社で研究職をしてないなら俺が化粧品会社にいる意味なんてないし、今週退職願いを提出した」

「え?待って?ちょっと意味がわからない‥‥」

「愛海と同じ会社に入れなかったからせめて同業者でいたかった。就活してた時はただの友達でしかなかったし、愛海と何かしらで繋がっていたかったから‥‥」

 そんな理由で就活してたなんて‥‥まじか。

「それに愛海と同じ仕事だと思えば離れてても頑張れる気がして続けてたんだ。大企業で学べることは多いけど、俺にとって一番大事なのは愛海だから。今の会社にはなんの未練もない」

「龍二の退職はもう確定してるんだ‥‥」

「うん。母さん達は先走ったことばっか言ってたし俺も愛海と一緒に働きたいけど、無理強いするつもりはないよ?でも愛海がうちの会社にとってプラスになるのは間違いないと思う。結婚も‥‥俺はしたいけど‥‥今は考えなくていいから。転職のこと、前向きに考えてみて?」

 単純に仕事のことだけを考えればこんないい話はない‥‥なのになんでこんなにもやもやするのか。

 もし転職したら龍二と結婚することになるだろう。そこは多分切り離せない。逆に龍二と別れることになれば退職が必須だ。

 でも違う。まだ早いとは思うけど、別に龍二との結婚が嫌なわけではない。

 多分私はコネ採用されることに罪悪感を感じているんだと思う。いくら言い回しを変えたところで、これは誰がどうみてもコネ採用だし。

 そして、研究職として採用されたにも関わらずその仕事をさせてもらえないことも原因のひとつだろう。

 まともに仕事もできず、自分の力で転職もできない。私は問題を解決しないまま逃げて、このまま龍二頼りの人生を送ろうとしている‥‥本当にそれでいいの?後悔しない?

 藤原さんに拒絶された理由がわからないまま転職したら、この気持ちをずっと引きずってしまいそうだ。
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