友達が結構重たいやつだった

嫌われた理由

 翌日、気分転換にデートしようと誘われて軽井沢まで足を伸ばし、ランチはわざわざ予約してくれたというちょっと高そうな店に入った。

「せっかくだから信州産の豚を使ったコースを予約したんだ。オードブルはビュッフェになってるらしい。ドリンクをオーダーしたら何があるか見に行こう」

 龍二は運転があるので飲めないが、我慢しないでいいと言われてワインを注文する。申し訳ないと思いつつ、素敵なレストランで昼からワイン‥‥さすが龍二だ、沈んでいた気分が徐々に上がる。

 うきうきで席を立ち、ビュッフェでオードブルを選んでいたら、突然声をかけられた。

「東海林さん?」

 振り返ると、そこにいたのはいつもとは少し雰囲気の違う藤原さんだった。

「藤原さん!?お、お疲れ様です」

「こんなところで会うなんて偶然ね?彼氏さんとデート?」

「え?あ、はい」

 そういう藤原さんも男性を連れている。藤原さんは確か独身だったはず。いつもと雰囲気が違うのは服装もメイクもデート仕様だからか。

「愛海?」

 私の動揺を察した龍二が声をかけてきた。

「あー‥‥こちら上司の藤原さんです」

「どうも、初めまして。渋谷といいます」

「あら?覚えてないかしら?私達、採用面接の時に一度会ってるわよ?」

「‥‥‥‥いや、記憶に残ってないですね?」

 ちょっと龍二!?言い方!彼女の上司にその態度はまずくないですか!?ほら!藤原さんの眉間に皺が寄っちゃってるじゃんかー!

「お、お休みの日にお時間取らせちゃってすみません!お連れの方がお待ちですよね!?本当すみません!失礼します!」

 その後、そう広くもない店内でどうしても藤原さんの姿が視界に入ってしまい、せっかくの高級ランチが台無しになってしまった。

「なんか変な感じになっちゃってごめんね?でもお料理は凄く美味しかったよ。ありがとう」

「いや、愛海は悪くないよ。あれは俺のせい」

「まあ、確かにそうだけど‥‥あれがなくても藤原さんを見つけた時点で気まずい感じになってたと思う」

「いや、実は俺、あの人のこと覚えててさ‥‥愛海を嫌ってる偉い人ってまさかあの人なの?」

「え?‥‥うん、そうだけど。なんで?」

「嫌われた理由に心当たりがないって言ってたじゃん?それ、原因が愛海にないからかも‥‥」

「何それ?どういうこと?」

「就活の時に『君は優秀そうだし仕事についてもっと詳しく教えてあげるから二人で飲みに行かない?』って誘われて『彼女がいるからそういうの無理なんで』って断った」

 だから龍二‥‥言い方よ‥‥
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