友達が結構重たいやつだった

愛海との出会い

「初めまして!私は愛海、東海林愛海。愛海って呼んでね!」

 高校の入学式で俺は運命の相手に出会った。

 根暗で愛想のない俺は小さい頃から友達を作るのが苦手過ぎた。俺以外のやつらがどんどん仲良くなっていく様子を見ているのは、自分の駄目さ加減を見せつけられているようで、その日はいつにも増して憂鬱な気分だった。

 そんな俺に声をかけてくれたのが、俺の生涯で唯一の天使、愛海だ。

 光を集めてキラキラ輝く丸くて大きい印象的な目を持つ愛海に、俺は一瞬で心を奪われた。

 自分に何が起こったのか、言葉では説明しづらい。だが、どうやら俺は『一目惚れ』というのをしてしまったらしい。

 俺が上手く反応できなかったせいで気まずい思いをした愛海は、俺に見切りをつけて他のやつらと楽しげに話し始めてしまった。せっかく声をかけてもらったのに‥‥俺は奈落の底に叩き落とされたような気分になった。

 ところが、優しい愛海は完全には俺を見捨てていなかった。毎朝俺の前を通って自分の席に向かう時、必ず『おはよう』と声をかけてくれるのだ。間違いない。彼女は天使だ。

 その『おはよう』を逃したくなくて早めに登校し、その後愛海と友人の会話に意識を集中させるのが俺の日課となった。俺は愛海の声を聞けるだけで毎日幸せを感じていた。

 そんなある日、愛海が彼氏を欲してることを知った。そんなまさかで、愛海が友人に知り合いの男を紹介してもらう約束をしていたのだ。

 俺の天使が他の男のものになる‥‥?

 そんなの許容できるはずがない。どうにかして回避したい。でもどうすればいい?

 焦った俺は意を決して愛海に声をかけた。

 策も練らずに声をかけてしまった俺は、一瞬にして頭の中が真っ白になってしまった。告白か?告白すればいいのか?

「渋谷君?何?どうかした?」

 え?なんで名字?‥‥そうか、俺と愛海はまだ名前で呼び合う仲ですらないんだった。

 一気に冷静になった俺は、とりあえずその日の予定をキャンセルして欲しくて、愛海を買い物に誘ってみることにした。

 友達ですらない俺の誘いが優先されるはずもなく、結局愛海は俺の知らない男の元へと行ってしまった。

 悔しいが仕方がない。とりあえず明日の約束は取り付けたので、今日のところは愛海に彼氏ができないよう必死に祈ろう。

 愛海を他の男に奪われたくない。俺は愛海を手に入れるため、全力を出すと決意した。
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