かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
結婚式は?
「由井さんが息せき切って駆け込んできたときにはびっくりしたよ」
啓介が苦笑する。
「本当にご迷惑をおかけして、すみませんでした」
望晴が恥ずかしそうに笑う。
巻き込まれた啓介には事の真相を話さざるを得なかった。
「そんなふうにこじれていたとはなぁ。同居に入籍のスピードが半端なかったもんな。やっぱりお互いの理解が足りなかったか」
「本当にそうですね。もっとちゃんと話し合うべきでした」
「まぁ、長すぎて、うちみたいにお互いの思考が読めてしまうのもなんだけど。勢いっていうのも大事だな」
なぐさめるように啓介が言ってくれる。
「そんなにわかりあえるのもうらやましいですが」
どれだけ経っても、それほど拓斗の思考を読めるようになるとは思えない。望晴はそんな関係にあこがれたが、自分たちは自分たちのペースがあると思い直した。
「それにしても、望晴に結婚を先越されるとは思ってなかったんだよな。俺もそろそろ決断するか」
「いいですね! 結婚式には呼んでくださいね」
「俺たちの結婚式より自分のほうが先だろう?」
「自分の?」
「セレブな結婚式しないのかよ? 俺はそっちのほうが楽しみだけど」
めんくらった望晴は目をパチパチさせた。
拓斗と話したこともなければ、まったく考えたこともなかった。
ずっとかりそめの関係だと思っていたから、考えないようにしていたのかもしれない。
ウェディングドレスに興味がないと言ったら噓になる。
(拓斗さんはモーニングコートがいいかしら? それとも、フロックコート? どちらにしてもかっこいいに決まってる! でも……)
拓斗は関心がないかもしれない。だから、今まで話にも出なかったのだろうと気持ちがしぼむ。
「考えてなかったのかよ。今度こそ、ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃないか?」
黙り込んだ望晴に、啓介があきれたように言った。
「そう、なんですけど」
拓斗は派手なことは好きじゃなさそうだし、不用だと言いそうだ。
(だけど、時間の無駄と言った初詣には一緒に行ってくれたわ)
今考えると、あれは望晴に合わせてくれたように思う。
それでも、結婚式となると規模が違う。
拓斗ほどの家柄だといろいろしがらみもありそうだ。
結局、望晴は結婚式をやりたいと口にすることもできず、話を逸らすことにした。
(仕事のことだと言いにくいことも言えるのになぁ)
不甲斐ないと思いつつ、啓介の喜びそうなことを言う。
「そういえば、来月のパーソナルカラー診断ですが、あっという間に定員オーバーになっちゃったんです」
告知は店頭ポスターとホームページのみだったのに、予約開始した翌日にはすべてが埋まったのだ。午前一組、午後三組が二日間なので、募集数自体も少なかったのだが。
「あぁ、知ってる。うれしい誤算だな」
案の定、啓介は話に乗ってきた。店の告知になるし、あわよくば売上アップできるからだ。
「こんなにカラー診断が人気だとは知らなかったよ」
「そうですね。最近はずいぶん一般化してきて、診断アプリなんかもありますが、万全ではないですからね。満足してもらえるかドキドキしますが、楽しみです」
「好評だったら、定期的にやってもいいな」
啓介はまだ始まってもいないのに、気の早いことを言った。
望晴はイベント当日になるまで、何度もシミュレーションをして備えた。
結果は大成功で、常連客は望晴の提案したコーディネートをぜんぶ買っていくことが多かったし、初めての客はリピーターになった。
お店の売上に大いに貢献したうえ、望晴の勉強にもなり、客にはまた是非開催してほしいと言われ、最高の結果だった。
ただ、二日間、緊張とともに話し続けた望晴は最後の客を送り出すころにはくたくただった。翌日が定休日でよかったと思う。
啓介が苦笑する。
「本当にご迷惑をおかけして、すみませんでした」
望晴が恥ずかしそうに笑う。
巻き込まれた啓介には事の真相を話さざるを得なかった。
「そんなふうにこじれていたとはなぁ。同居に入籍のスピードが半端なかったもんな。やっぱりお互いの理解が足りなかったか」
「本当にそうですね。もっとちゃんと話し合うべきでした」
「まぁ、長すぎて、うちみたいにお互いの思考が読めてしまうのもなんだけど。勢いっていうのも大事だな」
なぐさめるように啓介が言ってくれる。
「そんなにわかりあえるのもうらやましいですが」
どれだけ経っても、それほど拓斗の思考を読めるようになるとは思えない。望晴はそんな関係にあこがれたが、自分たちは自分たちのペースがあると思い直した。
「それにしても、望晴に結婚を先越されるとは思ってなかったんだよな。俺もそろそろ決断するか」
「いいですね! 結婚式には呼んでくださいね」
「俺たちの結婚式より自分のほうが先だろう?」
「自分の?」
「セレブな結婚式しないのかよ? 俺はそっちのほうが楽しみだけど」
めんくらった望晴は目をパチパチさせた。
拓斗と話したこともなければ、まったく考えたこともなかった。
ずっとかりそめの関係だと思っていたから、考えないようにしていたのかもしれない。
ウェディングドレスに興味がないと言ったら噓になる。
(拓斗さんはモーニングコートがいいかしら? それとも、フロックコート? どちらにしてもかっこいいに決まってる! でも……)
拓斗は関心がないかもしれない。だから、今まで話にも出なかったのだろうと気持ちがしぼむ。
「考えてなかったのかよ。今度こそ、ちゃんと話し合ったほうがいいんじゃないか?」
黙り込んだ望晴に、啓介があきれたように言った。
「そう、なんですけど」
拓斗は派手なことは好きじゃなさそうだし、不用だと言いそうだ。
(だけど、時間の無駄と言った初詣には一緒に行ってくれたわ)
今考えると、あれは望晴に合わせてくれたように思う。
それでも、結婚式となると規模が違う。
拓斗ほどの家柄だといろいろしがらみもありそうだ。
結局、望晴は結婚式をやりたいと口にすることもできず、話を逸らすことにした。
(仕事のことだと言いにくいことも言えるのになぁ)
不甲斐ないと思いつつ、啓介の喜びそうなことを言う。
「そういえば、来月のパーソナルカラー診断ですが、あっという間に定員オーバーになっちゃったんです」
告知は店頭ポスターとホームページのみだったのに、予約開始した翌日にはすべてが埋まったのだ。午前一組、午後三組が二日間なので、募集数自体も少なかったのだが。
「あぁ、知ってる。うれしい誤算だな」
案の定、啓介は話に乗ってきた。店の告知になるし、あわよくば売上アップできるからだ。
「こんなにカラー診断が人気だとは知らなかったよ」
「そうですね。最近はずいぶん一般化してきて、診断アプリなんかもありますが、万全ではないですからね。満足してもらえるかドキドキしますが、楽しみです」
「好評だったら、定期的にやってもいいな」
啓介はまだ始まってもいないのに、気の早いことを言った。
望晴はイベント当日になるまで、何度もシミュレーションをして備えた。
結果は大成功で、常連客は望晴の提案したコーディネートをぜんぶ買っていくことが多かったし、初めての客はリピーターになった。
お店の売上に大いに貢献したうえ、望晴の勉強にもなり、客にはまた是非開催してほしいと言われ、最高の結果だった。
ただ、二日間、緊張とともに話し続けた望晴は最後の客を送り出すころにはくたくただった。翌日が定休日でよかったと思う。