かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
 拓斗が仕事で忙しくする傍ら、結婚式の話も進んでいた。
 どうやっても招待客は二百人以上になるという。
 それを収納できる超高級ホテルが会場に選ばれた。
 会場のレイアウト、装飾、フラワーアレンジメント、招待状、席次、名札カード、メニュー、引き出物……こんなに決めないといけないものがあるのかと驚く。

「まいったな。こんなに手間だとは思わなかった」

 溜め息をついた拓斗はそれでも逃げることなく、一緒に決めてくれる。
 でも、望晴のドレスを選ぶときには拓斗は楽しそうだった。
 そして――。

 結婚式当日。
 純白のドレスに身を包んだ望晴は綺麗に化粧をしてもらって、鏡を見せられる。
 ドレスは上半身からウエストまで流れるような上品なレースに覆われ、シルクオーガンジーのスカートがAラインに広がるデザインだ。その裾もレース飾られ、とても華やかで心が浮き立つ。
 髪も編み込みでアップに整えられ、ティアラとベールに包まれている。

「綺麗だ、望晴」

 準備が終わったようで、拓斗も横に並んだ。

(こんなに白のフロックコートが似合う人っている!?)

 望晴は息を呑んだ。
 彼のフロックコートは白で、襟とタイはシャンパンゴールド、ベストは濃いベージュのストライプ。スラリとした拓斗がさらに洗練されて見える。

「拓斗さんもとても素敵です」

 うっとりと見つめていたら、彼が指先で望晴の頬をなでた。

「望晴、今日という日を迎えられて、うれしい」

 想いを込めて伝えられた言葉に、望晴の目が潤む。

「私もです、拓斗さん。あなたに会えてよかった」

 もうかりそめの妻でも便宜上の妻でもない。
 本当の妻として、この人と生きていく……!
 微笑んだ望晴は拓斗の手を取った。



―FIN―
 
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