かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
同居の始まり
拓斗は手ぶらで帰るのも申し訳ないからと、また一式服を買ってくれた。啓介はにこにこと会計をしていた。
それを持って、彼の家へ向かう。
タクシーを停めた拓斗は望晴を先に乗せ、「ノースエリア三番地へ」と運転手に告げた。
噂通り、ノースエリアに入る前にはゲートがあり、身元確認された。
とはいえ、守衛は拓斗を見て、すぐ「お疲れさまです」とタクシーを通したが。
「ベリが丘レジデンスまで行ってくれ」
拓斗は遠くにそびえたつマンションを指した。
それは販売価格が高すぎて話題になったところだった。
スタイリッシュな外観のマンションの前でタクシーを降りると、広いエントランスに出迎えられる。
まるでホテルのラウンジのように、上品なソファーとローテーブルが配置され、コンシェルジュまでいる。
(わぁ、天井高い! 入口からして別世界!)
望晴は思わず、辺りを見回してしまった。
磨き抜かれた白い大理石の床と柱、優雅な間接照明に、グリーンがセンス良く置かれている。
サウスエリアも十分高級感があるが、ここはレベルが違った。すべてが上質に感じる。
感動している望晴をよそに、拓斗はすたすたと奥のエレベーターへ足を進めた。
ポケットからカードを出して、エレベーターにかざす。
「このカードがないと、エレベーターが動かないんだ」
望晴の視線に気づいた拓斗の説明してくれる。それを聞いて、彼女は万全なセキュリティをうらやましく思った。
通された部屋は広いリビングで、モノトーンで統一された内装はオシャレだけど、モデルルームのようで生活感がなかった。
「早速だが、服はこっちにあるんだ」
拓斗は私室に望晴を招いた。
広い寝室にウォークインクローゼットが設置してあった。
紺のファブリックで落ち着いた内装の部屋の奥に大きなベッドが見えて、望晴はドキッとする。
布団が抜け出したままの形になっていて、パジャマが脱ぎ散らかしてある。
そちらに視線を向けないようにして、クローゼットの中を見た。
「ここにこうやって、セットにした服を季節ごとに置いているんだが、今季のものを家政婦がこんなふうにバラバラにしてしまって。ここは触るなって言ってあったのに」
腹が立つというように拓斗は備え付けの棚を示した。
そこにはゴミ袋を突っ込んであるところと、服が綺麗に折りたたんでしまってあるところがあった。
「ゴミ袋……?」
「あぁ、仕分けるのに便利だろ?」
どうやら拓斗は、コーディネートされた服を分けるのに、ゴミ袋を使っていたようだ。
(それを家政婦さんがきちんと棚にしまっちゃったのね。その気持ちはわかるわ……)
あまりの情緒のなさに、望晴はあきれた。
「せめてショッパーでも使っていただけたら……」
「かさばるじゃないか」
「そう、ですね……」
彼はこれが合理的だと思っているようだ。
なにか問題でもあるのかというように返す拓斗に、望晴は苦笑した。
「と、とにかく、この服をまたコーディネートし直したらいいんですね?」
「そうなんだ。よろしく頼む」
「承知しました。由井様はリビングでお待ちください」
気を取り直した望晴は、棚から服を取り出し、見ていった。
こう見ると、ずいぶん買ってくれたんだなと思う。
(着回しをしていなかったら、そりゃあ、量が必要になるはずだわ)
『貢いでるみたい』と言った啓介の言葉を思い出して、望晴は顔が熱くなった。
(そんなわけないのに。由井様はただコーディネートに困ってるだけだし)
首を振って、真剣に洋服を眺める。
拓斗から「コーディネートし終わったら、これに入れてくれ」とゴミ袋を渡されたが、望晴はそれを使いたくなくて、なんとか棚でわかりやすいようにできないか考えた。
それを持って、彼の家へ向かう。
タクシーを停めた拓斗は望晴を先に乗せ、「ノースエリア三番地へ」と運転手に告げた。
噂通り、ノースエリアに入る前にはゲートがあり、身元確認された。
とはいえ、守衛は拓斗を見て、すぐ「お疲れさまです」とタクシーを通したが。
「ベリが丘レジデンスまで行ってくれ」
拓斗は遠くにそびえたつマンションを指した。
それは販売価格が高すぎて話題になったところだった。
スタイリッシュな外観のマンションの前でタクシーを降りると、広いエントランスに出迎えられる。
まるでホテルのラウンジのように、上品なソファーとローテーブルが配置され、コンシェルジュまでいる。
(わぁ、天井高い! 入口からして別世界!)
望晴は思わず、辺りを見回してしまった。
磨き抜かれた白い大理石の床と柱、優雅な間接照明に、グリーンがセンス良く置かれている。
サウスエリアも十分高級感があるが、ここはレベルが違った。すべてが上質に感じる。
感動している望晴をよそに、拓斗はすたすたと奥のエレベーターへ足を進めた。
ポケットからカードを出して、エレベーターにかざす。
「このカードがないと、エレベーターが動かないんだ」
望晴の視線に気づいた拓斗の説明してくれる。それを聞いて、彼女は万全なセキュリティをうらやましく思った。
通された部屋は広いリビングで、モノトーンで統一された内装はオシャレだけど、モデルルームのようで生活感がなかった。
「早速だが、服はこっちにあるんだ」
拓斗は私室に望晴を招いた。
広い寝室にウォークインクローゼットが設置してあった。
紺のファブリックで落ち着いた内装の部屋の奥に大きなベッドが見えて、望晴はドキッとする。
布団が抜け出したままの形になっていて、パジャマが脱ぎ散らかしてある。
そちらに視線を向けないようにして、クローゼットの中を見た。
「ここにこうやって、セットにした服を季節ごとに置いているんだが、今季のものを家政婦がこんなふうにバラバラにしてしまって。ここは触るなって言ってあったのに」
腹が立つというように拓斗は備え付けの棚を示した。
そこにはゴミ袋を突っ込んであるところと、服が綺麗に折りたたんでしまってあるところがあった。
「ゴミ袋……?」
「あぁ、仕分けるのに便利だろ?」
どうやら拓斗は、コーディネートされた服を分けるのに、ゴミ袋を使っていたようだ。
(それを家政婦さんがきちんと棚にしまっちゃったのね。その気持ちはわかるわ……)
あまりの情緒のなさに、望晴はあきれた。
「せめてショッパーでも使っていただけたら……」
「かさばるじゃないか」
「そう、ですね……」
彼はこれが合理的だと思っているようだ。
なにか問題でもあるのかというように返す拓斗に、望晴は苦笑した。
「と、とにかく、この服をまたコーディネートし直したらいいんですね?」
「そうなんだ。よろしく頼む」
「承知しました。由井様はリビングでお待ちください」
気を取り直した望晴は、棚から服を取り出し、見ていった。
こう見ると、ずいぶん買ってくれたんだなと思う。
(着回しをしていなかったら、そりゃあ、量が必要になるはずだわ)
『貢いでるみたい』と言った啓介の言葉を思い出して、望晴は顔が熱くなった。
(そんなわけないのに。由井様はただコーディネートに困ってるだけだし)
首を振って、真剣に洋服を眺める。
拓斗から「コーディネートし終わったら、これに入れてくれ」とゴミ袋を渡されたが、望晴はそれを使いたくなくて、なんとか棚でわかりやすいようにできないか考えた。