この世界に音色を、君に彩を
転校生
今日の朝は、天使みたいな男の子はいなかった。
僕のこと不審者に見えていなくなっちゃったのかな。
そんなことを考えながら、今日も空を描く。
最近色々ありすぎて疲れたな。
まだ眠くてあくびをする。
描き終わったら片付け、学校に向かう。
歩いていると遠くに近所の人がいた。
僕は咄嗟に下を向いて、早歩きになる。
気づかれたらなにかある訳でもない。
なぜなら相手は誰かも分からないはず。
けれど下を向いてしまうのはもし気づかれたら嫌だからだ。
やっぱり気づかれなかった。
よかった。
それから少し歩くと学校が見えてきた。
下駄箱で靴を履き替え、教室に向かう。
静かに席に座ると、今日はいつもよりもみんなのテンションが高かった。
「今日転校生来るらしいよ!」
「ね!しかもイケメンらしいよ!」
そんな会話が聞こえてくる。
まぁ僕には関係ないけど。
僕は静かに過ごせればなんでもいい。
例え自分が消えてしまっても。
チャイムが鳴ると、先生が入って来た。
「おいお前ら、席つけ。」
先生が声をかけると、みんな席に戻る。
HRが始まった。
先生が今日の予定を伝えた後に言った。
「そして今日はニュースがある。」
教室が騒ぎ始めた。
「転校生が来た。」
わぁ、と誰かが声を上げる。
「入ってこい」
先生の声と共に入って来た子は、
あの公園で歌っていた子だった。