本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 首の後ろを手で支えられ、ピタリと隙間なく唇を押しつけられる。上下の唇をやわやわと()まれ、体温が上昇した。
 思わず吐息を漏らすと、かすかに開いたあわいをぬるりと温かいものに撫でられる。

「ふっ」

 むず痒いようなチリチリとした痺れに体がピクリと跳ねる。その瞬間、首の後ろの手が外された。まるで『嫌なら逃げていい』とでも言うかのように。

 ここで逃げるわけにはいかない。
 もし逃げたら、彼は私が本心では嫌がっていると思うかもしれない。

 逆に言えば、これは絶好のチャンスなのだ。彼の罪悪感を払拭(ふっしょく)するなら今しかない。
 引き戻ろうとする舌を追いかけ自分のものを絡ませると、彼の背中がピクリと跳ねた。

 こんなとき、私はいつも受け身だった。主体的になにかを仕掛けたこともなければ、しようと思ったこともない。毎回そんな余裕などなく、与えられる刺激に翻弄(ほんろう)され、なにも考えられなくなるのだ。

 だけど、いつまでもそれじゃダメだ。

 頭から蒸気が立ち上がりそうなほど顔が熱くてたまらないけれど、ここでくじけるわけにはいかない。
 なにごとも中途半端が一番ダメなのだ。やるなら最後までやり通す。それが昔からのモットーだ。

 いつも彼がするようなことを、見よう見まねで自分でもやってみた。彼のようにはうまくできないけれど、私の気持ちが伝わればいい。

 彼はしばらくの間されるがままになっていたけれど、徐々に私を導くように舌を動かし始める。
 私の息が上がる頃にゆっくりと離れた。

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