本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
6.卵焼きレッスン
圭君とのサプライズデートから瞬く間に一週間が過ぎた。土曜日の午後、私はひとり、ある場所へと来ていた。
「えっと、ここ……で合ってるわよね?」
スマートフォンに設定した目的地と目の前の建物は一致している。あらかじめ教えてもらっていた住所は、驚いたことに、今暮らしている圭君のマンションから地下鉄ひと駅しか離れていなかった。
まるでラグジュアリーホテルのような豪華なエントランスに気おされかけるが、職務で訪れるならよくあることだと気を取り直す。大理石の台座に埋め込まれたインターホンに部屋番号を押した。
『よく来たね。どうぞ』
知った声が聞こえてすぐ、自動扉が開いた。中からよく冷えたエアコンの風が顔にあたり、無意識にほおっと息をつく。地下鉄を出てからここまで数分歩いただけなのに、額に汗がにじんでいたのだ。
艶やかな大理石が敷き詰められた開放的なエントランスホールを横切り、奥にあるエレベーターへと乗り込んだ。
この豪華なマンションの一室に、結城首席の自宅がある。
そう、今日はこれから、先週お誘いを受けた『卵焼き講習会』がここで行われるのだ。