本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「北山が帰国してからこんなに早く結婚するなんて驚いたよ」
「え?」
「いや、すまない。失言だったな、忘れてくれ」

 急いで謝る首席に「いえ、大丈夫です」と口にする。

「でも、それを言うなら首席もじゃないですか?」

 あえて真面目顔を崩さずに言うと、彼が「ははっ」と声に出して笑う。

「そうだったな。お互いあっちでは仕事ばかりだったからな」

 在米大使館時代を思い返し、思わず苦笑いが込み上げる。
『それはあなたに認めてもらいたかったからです』と告げたら、この人はどんな反応をするのだろうか。今さら言うつもりもないけれど。

 どうやら彼は、あの頃の私の気持ちには気づいていないようだ。

 意外と鈍感なのかしら。
 外交ではあんなに鋭い洞察力を持っているのに不思議だ。

 拓翔君の父親は自分だと私に告白したのも、牽制ではなく、たださやかさんを守りたかっただけかもしれない。
 色々と繋がってほっとしたら、心が嘘のようにふわりと軽くなった。

「正直、自分が一番驚いています。夫とは幼なじみで、十数年ぶりに再会したらなぜかとんとん拍子にことが運びました」

 かなり大雑把ではあるが嘘はついていない。

「なるほど、幼なじみか」
「はい」

 今日、久しぶりに首席とさやかさんが一緒にいるところを見たが、まったく胸が痛まなかった。むしろ『幸せそうでよかった』と思えたくらいだ。
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