本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 さすがに太陽が再びビルの谷間に消えて行こうかという頃になると、一歩もベッドから出足を下ろしていないという事実に焦りを感じ始めた。

 このまま夜になって、万が一振出しに戻るようなことがあれば、月曜日に仕事に行ける気がしない。それはなんとしてでも阻止しなければ。『愛されすぎて体が動かないので休ませてほしい』だなんて、たとえ本当のことを言わなかったとしても恥ずかしすぎる。

 布団をかぶって『今日はもう無理!』と訴えたら、さすがの彼も反省したようだ。おとなしく引き下がってその晩は平和に眠ることができた。

 とは言いながらも、翌朝一番から甘えてくる彼についほだされてしまった。前日に比べればかわいいものだったからよしとする。
 その後はブランチがてら街へ繰り出し、デートも楽しんだ。

 両想いになりたての男女らしい濃密な週末を過ごしたが、ひとたび平日が始まれば、すべきことに追われる日常が戻ってくる。
 
 互いに仕事が忙しく、平日はたっぷり一緒にいられるわけではない。だからこそ、私はお弁当を作ったり、彼が仕事上がりに迎えに来てくれたりと、できることをしながら自分たちのペースで結婚生活を楽しんでいる。

 あの後、菊池さんは事務所を自ら辞めたそうだ。
 落ち込んでいるのではと思いきや、『もっと素敵な人を捕まえて幸せになります。私若いんで!』と威勢のよいセリフを残して去って行ったらしい。
 いっそすがすがしいほどの貪欲さだ。
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