本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「香ちゃん、ぼうっとしてないで。イベントが始まるぞ」
「え! なに、どうするの⁉」

 意味がわからずあたふたする私の代わりに、お兄ちゃんがすばやくボタンを押してくれた。

「やった! ミッションクリアだ」

 どうやらボーナスで賞金アップのようだ。

「初めてなのにすごいじゃないか」
「私はなにもしてないわ。圭吾お兄ちゃんのおかげよ」

 出てきたレシートを交換所に持って行って換金すると、最初に投入した金額の何倍にもなって返って来た。

「さて。元手もできたことだし、もう少しカジノらしいことをやってみようか」

 お兄ちゃんはにこりと微笑むと、私の背中に手を添えてルーレット専用のテーブルに近づく。

「圭吾お兄ちゃん、本格的なのは私ちょっと……」

 ルールもわからないのに、大金を賭けるのは無謀すぎると思う。
 尻込みする私を見て彼が微笑む。

「じゃあ今度は俺がやるから、香ちゃんは隣で見ていたらいいよ」

 私がうなずくと、彼はディーラーに声をかけて椅子に腰を下ろした。

 彼がチップを『2nd 12』と書かれた枠の中にチップを置くと、ディーラーが『No more bets, please.(賭けを締め切ります)』と声をかけた。

 ルーレットに白い球が投げ込まれた。カラカラカラと音を立てて回り止まる。球が入っているのは『21』だ。

「当たりだ」

 ディーラーからチップが倍になって戻って来る。
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