本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 カジノに夢中になった私が依頼料のことを忘れるのを狙っていたの?

 じっと見つめると、ふいと目を逸らされた。

「圭吾お兄ちゃん!」
「バレたか」

 こちらに顔を戻しニヤリと口の端を上げられ、言葉を失う。まさかうやむやにしようとしていたなんて。
 そっちがその気ならこっちにだって考えがある。

「約束を反故にする気なら、事務所あてに依頼料を振り込むからね」

 どこの法律事務所に所属しているかなんて、彼の母親に聞けばすぐに教えてくれるだろう。幼なじみの強みを生かさない手はない。
 絶対に譲らないわよと、じっとりした目で見続けていると、とうとう彼が音を上げた。

「さすがにそれは困るな」

 眉尻を下げた彼に、それならきちんと依頼料を払わせてと迫ると、彼は少しの間逡巡してから、再び口を開いた。

「じゃあコイントスで決めよう」
「え?」
「コイントス。知らないのか?」
「もちろん知ってるわよ」
 
 投げたコインの裏表を当てるシンプルなゲームだ。コインさえあればどこでもできる。

「最初からそれにすればよかったんじゃない? カジノに行く意味あったの?」

 思ったことをそのまま口にしたら、彼があははと声を上げる。

「でも楽しかっただろう?」
「……まあまあ」
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