本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
2.再会は異国の地で

「うわっ、すごい!」

 屋上に足を踏み入れた瞬間、絶景に思わず声が出た。プールの向こう側に視界を遮るものがないのだ。

 時は日没。黄昏色に染まるシンガポールの街は、薄藍色のベールが降りて来るのを待ち構えるようにネオンを灯し始めている。

 こんなふうに世界の大都市の上空を船で遊覧している気分に浸りながらプールを楽しめる場所は、世界でもこの『インフィニティプール』だけだろう。

 インフィニティプールはシンガポールのランドマーク的なホテル『マリーナ・ベイ・サンズ』の屋上にある。
つい数日前、衝動的にこの大型連休はここで過ごそうと決めた。

 五つ星を有する世界的人気なホテルの予約を直前になって取ろうとするなんて、今思えば無謀もいいところだ。タイミングよくキャンセルが出たのは、運がよかったとしか言いようがない。

「ほんと、最高すぎるわ」

 プールの際によりかかり、絶景にうっとりと酔いしれる。思い切って来ることにして本当によかった。

 このホテルには他にもラグジュアリーなスパや、お手頃なローカルフードから世界の一流シェフの料理まで多様なレストランが入っている。それだけでなくショッピングモールやカジノも併設してあるので、外に出ずとも十分に旅を満喫できるのだ。さすが五つ星ホテル。短い滞在期間でもひとりで楽しめるだろうと思ったが、期待以上だ。
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