本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「なんだか癪だな」

 は? と目が点になった。なにが言いたいのか全然わからない。

「会わないうちに大人の女性になった香ちゃんは、いつの間にか男心をくすぐるすべまで身に着けているなんて」
「ちがっ」

 頭がカァッと熱くなった。
 
「こ、こんなふうになった初めてで……その、他の人には、んっ!」

 両目を見張ったお兄ちゃんは、私の言葉を遮るように口を塞いだ。
 いっそう激しさを増した愛撫に翻弄されていたけれど、誰も触れたことのない場所に彼の指が忍び込んできた瞬間。

「痛っ!」
「まさか……」

 目を開けたら、両目を大きく見張った彼の顔が飛び込んできた。
 隠そうと思って黙っていたわけじゃないけれど、なんとなく気まずくておずおずとうなずく。

「なんで言わなかった」
「だって……」

 もしあの場で『実は未経験です』だなんて言ったら、絶対にお兄ちゃんは私に手なんて出さない。〝ひとりの女として見てもらいたい〟という過去の自分を、十数年越しでまた打ち砕かれるなんて悲しすぎる。

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