本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
 なにを返しても無駄なようだ。やっぱり相手にするべきじゃなかった。
 つい言い返してしまったことを悔やみながら、今度こそ無視を決め込んでプールサイドを目指そうとしたとき、マンバン男が前に回り込んできた。反射的に後ずさろうとするが、真後ろに茶髪モヒカンがいる。

 自分より背の高い男ふたりに挟まれ身動きが取れず、焦りを感じ始めた。自分ひとりで切り抜けるのは難しいかもしれない。大声で助けを求めようか。プールには他の客もいるし、プールサイドにはダイニングのスタッフもいる。

 意を決して息を吸い込んだ。けれど声を上げる直前、背中から引っ張られる感覚がした。え? と思うと同時にビキニの結び目がほどかれた。

「きゃあっ!」

 慌てて両手で胸を押さえる。一瞬の隙を狙ったかのように、後ろから抱き着かれた。

 全身がぶわりと総毛立ち、喉の奥から悲鳴がせり上がる。が、それが口から飛び出す直前、前から伸びてきた手に口を塞がれた。

「おっと、叫ぶなよ」

 顔を近づけてにやりと笑いながら言う。

「叫んだらこっちもほどいちまうぞ、いいな」

 首の後ろにあるもうひとつの結び目を、モヒカン男が口で引っ張ろうとするので慌てて首を振った。

「よし。そうだ、酒がだめなら景色を楽しもうぜ」

 後ろから抱き着かれたまま方向転換される。押されるようにして再びプールの縁まで戻って来た。
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