君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 渡す人物の前で土産を買うというほど滑稽なことはない。彼の裏をかくつもり……ではなかったのだけど、到着時間をずらして暇を作ることができなかったのは私の失策だ。
 海外で先に買っておけばよかったのでは? と考えたが残念、口に合いそうな物を用意できそうになかった。だからといってキーホルダーやぬいぐるみ等、誰が欲しがるというのか。


「お嬢様、長旅でお疲れでしょう。外に車を用意してありますので」
「そうね、久々の我が家へと帰りましょうか」


 土産について総一朗がいらないと言うのならそれに甘えよう。不要な優しさは時に、相手へ必要以上の気を使わせることにもなりかねない。
 彼に荷物を預け、久しい車へと乗り込むと、生まれ育った屋敷へそれは走り出した。


< 48 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop