君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
 2017年 3月下旬


 私は入学式を迎える直前、最悪のタイミングで一本の電話を受け取ることとなった。


「今更になってなぜ? 日程の変更をお願いします」
『二度は言わん、最後の研究と言っているだろう。こちらも譲歩している、四月からの二ヶ月間、こちらへ帰ってこい』
「お父様、困ります。高校に入学して即休学しろというのですか?」
『お前は既に大学を卒業しているだろう、今更、高校に通ったところで何のメリットがある? お前のやることについては今までもこれからも口出しするつもりはないが、親として不自由しないだけの金、そして例の情報を考慮した分、十分に支払っているはずだ』


 世迷言を。親……親だと? なんと自分勝手な。ただの経験でしかない私を作っておいて、それで親を名乗るというのか。
 確かに私の元には莫大な資産がある。それは宮之城の娘としての地位があるから。
 そう、どんなにあがいても、どこまで行ったとしても私は宮之城の娘。戸籍から縁を切ったとしてもそれは変わらない。両親にとって経験でしかない私は、ただ子を作ったという情報であり、両親か私のどちらかが死ぬまで、子は私で親は二人なのだ。


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