君のブレスが切れるまで―on a rainyday remember love―
「だから……放任して、好き勝手やらせたから、条件を飲めと?」
『端的に言えばそうだ。お前の眼には、まだそれなりの情報が残っている可能性があると見ている。二ヶ月、それが終わればお前には関わらないつもりだ』
「それが親の言うセリフですか」


 これ以上、私から話すことはなかった。父が言うように、この眼は私が口外していないものともう一つ、隠された何かがあるような気はしている。しかし、それをたかが研究というもので暴かれるようなことでもないのは確かだ。
 どちらにせよ逃れることはできない。これは強制。突っぱねれば、あの子と会う暇もなく私は海の向こうへ強制連行だろう。


 こういう言葉がある。人が運命と呼ぶものの大半が自分の愚行にすぎない、と。ドイツの哲学者、アルトゥール・ショーペンハウアーが残した名言だ。
 しかし、私があの子に会うその日を迎えるためにやってきた今日までのことを、愚行だとは思っていない。たとえそれが愚行であったとしても、私はそう信じていた。


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