契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
その上父が社長を務める会社の従業員である。
興味本位でちょっかいをかけていい女性ではなかった。諸々のハラスメントに抵触しかねないではないか。
それに社内で煩わしい関係を築く気は微塵もない。
東雲は希実の存在を把握しつつも、必要以上に踏み込む気は一切なかったのだ。
小さくて愛らしい子がいるな、と認識しているだけで充分だった。
それでも見かけた際、自然と眼が行ってしまう程度に、気になっていたのだろう。
要領が悪いところがあっても小さな身体で頑張っており、生真面目で丁寧な事務作業をこなす人材だと評価するくらいには、彼女を無意識に観察していたのだから。
――営業事務は会社にとって大事な仕事だ。作成された書類に不備があれば、あちこちに影響が出る。
希実と東雲の接点は特にない。自分が営業部にいた頃には、彼女はまだ入社していなかった。
だから書類の作成者として、彼女の名前を眼にするだけだ。
けれどそのどれもが、見やすく丁寧に纏められていた。
雑に前年のグラフを切り張りしたのではなく、比較対象が一目瞭然になるよう、色彩などにも配慮がされていた。
高齢の役員はタブレットが上手く使いこなせず、未だ紙での資料を欲しがる者も多い。そんな彼らのために、さりげなく紙で出力したものを準備するようになったのは、希実の発案なのだとか。
興味本位でちょっかいをかけていい女性ではなかった。諸々のハラスメントに抵触しかねないではないか。
それに社内で煩わしい関係を築く気は微塵もない。
東雲は希実の存在を把握しつつも、必要以上に踏み込む気は一切なかったのだ。
小さくて愛らしい子がいるな、と認識しているだけで充分だった。
それでも見かけた際、自然と眼が行ってしまう程度に、気になっていたのだろう。
要領が悪いところがあっても小さな身体で頑張っており、生真面目で丁寧な事務作業をこなす人材だと評価するくらいには、彼女を無意識に観察していたのだから。
――営業事務は会社にとって大事な仕事だ。作成された書類に不備があれば、あちこちに影響が出る。
希実と東雲の接点は特にない。自分が営業部にいた頃には、彼女はまだ入社していなかった。
だから書類の作成者として、彼女の名前を眼にするだけだ。
けれどそのどれもが、見やすく丁寧に纏められていた。
雑に前年のグラフを切り張りしたのではなく、比較対象が一目瞭然になるよう、色彩などにも配慮がされていた。
高齢の役員はタブレットが上手く使いこなせず、未だ紙での資料を欲しがる者も多い。そんな彼らのために、さりげなく紙で出力したものを準備するようになったのは、希実の発案なのだとか。