契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――うん……この辺りではお目にかからない美形が家にやってきたら、そりゃ驚くよね……でも我が親ながら、恥ずかしいから早く再起動して……!

 そんな渾身の願いが通じたのか、母はぎこちないながらも二人を招き入れてくれた。
 完全にギクシャクしていたものの、そこは気づかない振りをする。
 しかし居間で待っていた父も全く同じ反応をしたので、頭を抱えたくなった。

 ――こんな時に似たもの夫婦を発揮してほしくなかった……!

 しかもそれだけならまだしも、想定外に妹の愛実が同席していたのだ。彼女は妊娠中であるにも拘らず、『姉の婚約者が見たい』という好奇心を抑えられなかったらしい。
 そして台所での台詞に繋がるのである。

「だって、お父さん昨夜は『どんなに根暗で寡黙な青年がきても、俺が盛り上げてやる』とか息巻いていたのに、今はもう完全に借りてきた猫状態じゃん……安斎さんが眩し過ぎて目も合わせられない有様だよ」

 チラッと居間を覗けば、妹の言う通り両親と東雲は会話が弾んでいなかった。
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