契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――一番は一番でも、下から数えてじゃないの……

 しかし親の視点から見れば、希実とは正反対の評価なのか。
 両親は笑顔で頷き合っている。その表情には、娘を不幸に陥れるつもりが毛頭ないのが伺えた。

「……女性の幸せは婚姻の有無や婚期に左右されないと思いますが」
「はははっ、だとしてもやはり一人前になるのは、立派に結婚して子供を産んでからだ。いくら勉強ができていい大学へ進学して大きな会社には入れても、女は孫の顔を見せることが一番の親への恩返しだよ。その点、希実は愛実に毎回負けているなぁ」
「そうね。希実には愛実を見習ってこれから頑張ってもらわなきゃ!」

 父に悪意はない。母にも。
 根深い価値観を疑っていないだけ。
 だがそれこそが希実を思い切り傷つけた。

 ――息苦しいな……きっとこの先東雲さんと別れても……私は地元には戻りたくないかもしれない……

 危うく窒息しかけて、どうにか息を継ぐ。
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