契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――私のこと、『価値がある』って言ってくれた……それに色々褒めてくれたよね。両親への牽制だとしても――嬉しいな。
 
他者に認められることは、自信に繋がる。
 特に弱り気味の時にかけられた優しい言葉の数々は、とても希実の心を揺さ振った。

 ――リップサービスだとしても、構わない。私が今救われた気分になっているのは、紛れもない真実だもの。

 親元を離れ、故郷に戻って初めて、味方を得られた心地がした。
 毎回里帰り中は、いつ傷つくことを言われても大丈夫なよう気を張っている。そんな希実の背中を守ってくれる人が現れたのかと思えた。

 ――東雲さん、いい人だな。

 希実の尊厳を守ってくれたと思うのは言い過ぎか。
 けれど彼のおかげで、下を向かずに済んでいる。それだけで充分だと思えた。

「さ、それじゃ料理を温めるから、貴女たち手伝いなさい」

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