契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 東雲がフォークを口に運ぶ姿は、あまりにも流麗だ。
 ただチョコレートケーキを食べているだけなのに、とても絵になる。
 面食いではないはず希実ですら、束の間眼を奪われずにはいられなかった。

「会食は結局のところ仕事の延長ですし、複数の友人と予定を合わせるのは難しい。かといって女性を誘うのはリスクがあるんです。となると必然的に一人寂しく食事をせざるをえません。これからは希実さんが付き合ってくれるのかと思うと、心の底から楽しみです」
「わ、私なんかが役に立てるかどうか……」
「一緒に食事をするものだと勝手に決めてしまいましたが、これからたまには付き合ってもらえますか?」
「勿論です。喜んでご一緒させていただきます」

 それくらいお安い御用だ。
 むしろ共に暮らしているのに食卓は全て別の方が不自然だろう。
 まだ彼と同じ空間にずっといることには慣れないものの、二人で向かい合って食事することに苦痛はなくなっていた。
 それどころか希実としても無言で黙々と食べるより、ずっといい。
 これなら同居生活もさほど苦労せずに済むかもしれないと、内心ホッとした。
 次の瞬間。

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