契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 本気で嫌がることとは具体的に何を意味するのか。
 今だって、大いに困り果てている。
 だが嫌かと問われれば即答できないのが不可解だった。

「え、でも当初の約束では……」
「状況は刻々と変化します。婚約期間だって長くとるつもりでしたが、そうも言っていられなくなったでしょう? 同じことですよ。人は順応できる者が強いんです」

 自信たっぷりに断言され、希実は見事に言い負かされた。
 堂々とした東雲の態度を前にすると、無条件で彼が言っている内容が正しい気がしてくるから厄介だ。
 いまいち納得できない部分はありつつも、最終的に希実は頷かざるを得なかった。

「そう……です、よね。まずは飯尾さんの追究を躱さなくてはなりませんし……」
「ええ。昔から知っていますが、彼女は欲しいものを手に入れるまでなかなか諦めませんからね。こちらも万全の態勢で迎え撃たないと」
「わ、分かりました。頑張ります」
「理解してくださって、安心しました」

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