契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 極上の笑顔で彼が希実の眼鏡を返してくれる。
 他者から顔に眼鏡を乗せられたのは初めてで、そのことにもドギマギせずにはいられなかった。

「……希実さんはコンタクトやレーシック手術を考えたことはありますか?」
「ぇ……っ、いえ特には……」
「眼鏡に拘りがある?」
「そういうわけではありませんが……」

 急に話題が変わり、混乱が尾を引いている。
 とにかく質問に答えるべく、希実はひとまずキスに関しては一旦脇に置くことにした。

「コンタクトも手術もちょっと怖くて……小さい頃から眼鏡が当たり前だったので、特別考えたことがありませんでした」

 それに何となく、『洒落づいた』と思われることが怖かった。

 ――自意識過剰だと思うけど……

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