契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 今希実が身につけている眼鏡は、とてもシンプルなオーバルタイプだ。
 購入した時には『気に入った』というより、『一番無難』だと感じたから。
 試着もそこそこに、度があっていればデザインはあまり重視していなかった。
 そういう基準しか持っていないため、『遊び心のあるフレーム』なんて視野に入るはずもない。
 いや、正確に言えば、恐れ多くて試着も躊躇われた。
 けれど希実に興味がないかと問われれば、答えは否だ。
 本当は、一人で選ぶ度胸がないだけ。
 ショップスタッフに嘲られている被害妄想が邪魔をして、『可愛い』と感じた品に手が伸ばせなかったのだ。

「東雲さんと一緒に……ですか?」
「ええ。僕に選ばせてくださいませんか? そうだ、他にも希実さんが持ってきた服では不充分ですよね。以前にも言いましたが、今後はパーティーの同行をお願いする機会も出てきます。せっかくですから必要なものを揃えましょう」

 言うなり、テーブルの片隅に置いてあったタブレットを彼は確認した。
 手早く操作し、どうやらスケジュール確認しているらしい。
 しばらくしてから、こちらに向け微笑んだ。

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