契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「再来週でしたら半日時間を作れます。そこで諸々買いに行きましょう」
「え……っ」

 ――こんなに綺麗な人と私が……?

 初めに浮かんだ感想は、『並んだら冒涜になるのでは?』だ。
 きっとどういう関係なんだと好奇の視線に晒される。おそらく誰も、二人を夫婦とは思わないだろう。
 希実は想像してみて、よくて『主人と使用人』悪くて『被害者とストーカー』なのではないか不安になった。
 それくらい、どう考えても自分たちは不釣り合いなのだ。

「え、や、東雲さんに迷惑をかけられません……!」
「迷惑? どうして僕に? ……ひょっとして、僕と出かけるのが嫌なんですか……?」

 顔を曇らせた美男子の姿に、希実は慌てふためいた。
 東雲との外出が嫌なわけではないが、だからと言って大乗り気でもないのが本音である。けれどそれを説明するのは難しい。
 誤れば、彼を傷つけかねない。
 今でも東雲はほんのり打ちひしがれて見え、希実は罪悪感に襲われた。

< 145 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop