契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「私、東雲さんと上手く共犯者になれそうです」
「……でしたら、幸いです」

 どことなく歯切れが悪い彼の不自然さは気になったが、希実はカップに残ったコーヒーを飲み干した。
 苦みと酸味のバランスが丁度良く、口内の甘みを流してくれる。
 手に馴染む可愛らしいデザインのカップを愛でていると、東雲がふっと息を漏らす音が聞こえた。

「……案外、希実さんは小悪魔ですね」
「私がですか? え、何か東雲さんの気に障ることを言ってしまいましたか……?」

 これまでの人生で言われたことのない言葉に驚き、無意識にやらかしてしまったのか大いに焦る。
 猛烈な勢いで己の言動を振り返ったが、希実に心当たりはなかった。

「す、すみません……もしお気に召さないことがあれば、教えてください」
「ふふ……そうですね。貴女の純真なところは魅力の一つですよね。――ではお言葉に甘えて一つよろしいでしょうか?」
「は、はいっ、何でもおっしゃってください!」

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