契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 滑らかな低音が、希実の鼓膜を擽った。
 アッサリと呼び方を変えられる彼は、こういうことに慣れているのかもしれない。
 だがこちらはスイッチを切り替えるような器用さを持ち合わせていなかった。

「ひゃぁ……っ」

 無様な叫びを漏らし、両手で顔を覆う。
 触れた頬も額も、ひどく発熱していた。きっと真っ赤に熟れている。このまま頭のてっぺんから蒸気が噴き出ても不思議はないくらいに。

「顔、隠さないで」
「む、無理です! あ、引っ張らないでください!」

 手首を取られ、顔から掌を引き剥がされそうになった。
 今はとても人様に見せられる状態ではない。
 希実は背を丸め、東雲から顔を隠そうとあがいた。

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