契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
入籍
婚姻届を提出し、二人は書類上完全に夫婦になった。
実体はともかくも、法律的に認められたのだ。
そして籍を入れれば、もはや社内で隠すことは難しい。
最近では通名で仕事を続ける者もいて、結婚の有無を人事や上司以外に明らかにする必要がないとしても――噂はどこかから漏れるものである。
特に注目の的と言って過言ではない安斎東雲の婚姻が、社員の興味を引かないはずがなかった。
結果、瞬く間に社内の誰もが東雲と希実の入籍を知ることとなったのだ。
「――ちょっと、あれが安斎さんの……?」
「え、普通。てか地味。ガセネタじゃないの?」
「安斎さん、飯尾さんと付き合っていたんじゃないの?」
昼休みになるや否や、希実を遠巻きにして大勢の女性陣が囁き合っていた。
勿論、希実が働くフロアでもヒソヒソ話は止まらない。
だがいつも存在感を消して黙々と仕事をしている希実に対し、こんな時だけ野次馬根性丸出しで口火を切る度胸はないらしい。
特に今日は希実が必死に『話しかけるなオーラ』を発しているのが功を奏したのか。皆が様子を窺い合い、結果仮初の平穏が保たれている状態だった。
実体はともかくも、法律的に認められたのだ。
そして籍を入れれば、もはや社内で隠すことは難しい。
最近では通名で仕事を続ける者もいて、結婚の有無を人事や上司以外に明らかにする必要がないとしても――噂はどこかから漏れるものである。
特に注目の的と言って過言ではない安斎東雲の婚姻が、社員の興味を引かないはずがなかった。
結果、瞬く間に社内の誰もが東雲と希実の入籍を知ることとなったのだ。
「――ちょっと、あれが安斎さんの……?」
「え、普通。てか地味。ガセネタじゃないの?」
「安斎さん、飯尾さんと付き合っていたんじゃないの?」
昼休みになるや否や、希実を遠巻きにして大勢の女性陣が囁き合っていた。
勿論、希実が働くフロアでもヒソヒソ話は止まらない。
だがいつも存在感を消して黙々と仕事をしている希実に対し、こんな時だけ野次馬根性丸出しで口火を切る度胸はないらしい。
特に今日は希実が必死に『話しかけるなオーラ』を発しているのが功を奏したのか。皆が様子を窺い合い、結果仮初の平穏が保たれている状態だった。