契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 大変な思いをしているのに反比例し、希実は妙に部署内で気遣われていた。
 おかげで東雲との入籍がバレて以来、働き難くならずに過ごせている。

 ――そういう意味では、恵まれているかな……

 和気あいあいとまではいかずとも、問題なく日々を送れているのだから、贅沢は言うまい。
 そんな探り探りの日々の中、東雲と約束していた『買い物』の日がやってきたのである。
 彼は午前中に片付けなくてはならない仕事があったようだが、宣言通り午後は希実のために時間を作ってくれた。
 晴れて二人で出かけられるとあって、心が躍る。
 これが初デートだと思えば尚更だった。
 何だかんだ楽しみにしていた自分に苦笑してしまう。
 だからなのか――実は朝一で、希実は予約していた眼科へ一人で行っていた。
 コンタクトレンズに変えることを視野に入れ、色々相談し視力を計り直してもらいたかったからだ。

 ――以前なら、こんなこと思いもよらなかったな……

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